お疲れ様です! いきくんです。
前回の記事「パンチ☆マインド☆ハピネスは意外と理に適っています【前編】」は読んでいただけましたか?
今回はその続き、【後編】をお送りします。
【あわせて読みたい】
AメロからBメロへ
「そうだね」でトニックの「F」から「E」「E♭」と半音ずつ下がって、Bメロの頭で「D7(=セカンダリードミナントのV7/II)」にたどり着きます。
①同じタイプのコードは半音でスムーズにつなぐことが出来ます。今回のような半音の下降は特にスムーズですが、
たとえば「ようこそジャパリパークへ」のAメロの終わりは「B♭」から「B」「C」と半音で上行しています。
また、大石昌良さんの言う「禁断のコード進行(マイナーセブンスの半音下降)」も広義ではこのパターンの一種です。(例:Dm7→C#m7→Cm7など)
②とりわけメジャー系のコードでは、セブンスを含んでいない不完全な形ではありますが、ドミナントセブンスと見立てて「裏コード」による半音下への解決のニュアンスも聞き取ることが出来ます。
Bメロ
★D7♭9→Gm7→C7♭9→Fmaj7(繰り返し)
さて、Aメロの最後に「F」から半音で下降して、Bメロの頭に「D7」を持ってきたことで、
Aメロの「II→V→I→VI」という動きが、Bメロでは「VI→II→V→I」と、ひとつずらされています。
これは王道進行を用いたJ-POPなんかでも非常によく見られる手法です。
セクションの変わり目で調節して、コード進行は自体は同じだけど頭にくるコードを変えているわけです。
簡単に言うと・・・
Aメロは「2、4小節目にドミナントが来て、1、3小節目で解決する」という最も自然で一般的な機能の流れであるのに対し、
★Gm7→C7(緊張!)→Fmaj7→D7(緊張!)
Bメロは「1、3小節目にドミナントが来て、2,4小節目で解決する」という動きに変えているわけですね。
★D7(緊張!)→Gm7→C7(緊張!)→Fmaj7
ちなみに「灼熱スイッチ」のサビの最初の4小節も広い意味ではそのパターンです。
また、Bメロではウォーキングベースとドラムを倍テンにすることで雰囲気をガラリと変えているのも効果的ですね。
Bメロからサビへ
★C→D
この曲のキーは「F」ですね。
Bメロからサビへ行く前に、「C」を3小節続けています。
ドミナントを長時間鳴らし続けたと思ったら、4小節目で「D」に進行します。
ここで、「お、サビからは全音上(Gメジャーキー)に転調するのかな?」と思わせておいて、
「実はこの「D」は2度に進むセカンダリードミナントで、サビも相変わらずFメジャーキーでしたー」という手のひら返しです。
この曲はこの手の仕掛けが多いですね。
サビ
★Gm7→C→Am7→C#dim7→Dm7→D7
Gm7は伴奏とボーカルでテンション「9」と「11」がおしゃれに乗ってますねー。
さて、こちらも「原型」はAメロと同じタイプですね。
定番のII→V→III→VI進行です。
「III」と「VI」はそれぞれ前半2拍はダイアトニックコード、後半2拍は次へ進むセカンダリードミナントに変えてあります。
「C#dim7」はセカンダリードミナント「A7」の代理ですね。「Dm7」へなめらかにつないでいます。
「D7」はベースが「C」→「A♭」と動いているのが印象的ですね。
ウォーキングベースでは、特にこのようにコードが「4度進行」しているとき、コードチェンジの1拍前に、「次のコードのルートの半音上=裏コードのルートになる音」を持ってくることがよくあります。
純粋にジャズの曲であれば、「D7でコードチェンジの前に一瞬ベースが裏に行ったな」で終わりますが、この曲では「A♭」がかなり強調されているので「A♭7♭5」と表記するのもアリかも知れません。
★Gm7→GmMaj7→Am7→AmMaj7→Bbmaj7→Bm7♭5→Cm7→F7→D7♭13
その続きも、初見の時は笑ってしまいましたが、恐れることはありません。
原型はこう。
基本的にはダイアトニックコードの順次進行で、「C7」の代わりに「Cm7」に進んで「Cm7→F7→D7」の形に持って行っているだけです。
(短3度の関係にあるドミナントセブンスの親和性については「前編」でお話ししましたね。)
そこから、クリシェを利用して3、4拍目をパッシングコードにリハモしているだけですね。
★Gm7→E♭7(9,#11,13)omit3→Am7→C#dim7→Dm7→Dm7/C
繰り返し2回目は、Cがイキスギコードに近しい何かに変わっています。
もとをただせば普通に「サブドミナントマイナーの♭VII7」で、ドミナントをこのコードに置き換えることは非常によくあります。
実際♭VII7のはたらきが強く聞こえるわけですが、「おや?」と思うのはおそらく3度が入っていないからですかね。後でまたゆっくりにして聞きます。
★G/B→B♭6→Am7→A♭dim7→Gm7→F/A→B♭→Bdim→C7♭13→D♭→E♭→C7/E→(F)
ひとつ前の「Dm7→Dm7/C」から始まり、半音でくだって、「Gm7」で折り返してのぼるというベースラインを構築しています。
「G/B」(II/3)というコードは、V7/V関係のコードとして使われることもありますが、この場合はサブドミナントが変化したII7の仲間と考えることもできます。
#IVm7♭5と近いコードで、実際ここはどちらのコードにしてもワークします。強小節に使いやすく、IVにも進みやすいコードということで、最近のアニソンでもよく見るコードです。
そこから先は基本的にダイアトニックコードの順次進行を、それぞれパッシングコードでつないでいるだけです。
「A♭dim7(♭IIIdim7)」はディセンディングディミニッシュと呼ばれるはたらきを持ちつつ、トニックディミニッシュとまったく同じというコードです。
「Gm7(IIm7)」と共通音が2つ、半音の関係にある音が2つということで、下りのパッシングコードとして多用されます。
(「乗ってけ!ジャパリビート」のイントロに登場するやつですね。)
というわけで、くだりはこんな感じ。
折り返してGm7からは、「原型」は1小節ずつのシンプルな「ツーファイブ」ですね(V7は♭系)。
ソ→ラ→シ♭→シ→ド→レ♭→ミ♭→ミ→(ファ)
というツーファイブのベースラインを、1音ずつハーモナイズしていった結果のコードです。
(とまあ、便宜上全てハーモナイズして書いてみたものの、「E♭」とかは「C7♭13」の一部にしか聞こえないんですけどね(笑))
おわりに
いかがでしたでしょうか?
「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」はカオスなコード進行に聞こえがちですが、こうしてみるとAメロもBメロもサビも、基本的にはダイアトニックコードの「I」と「VI」と「II」と「V」を基にリハーモナイズしているだけです。
一見めちゃくちゃに思える曲でも、「原型」を分析していくと、実はかなり理に適った「骨組み」の上に成り立っているんだな、ということが分かりますね。
今回の記事はこれで終わりますが、この曲にはもう一か所非常に面白い「転調」を扱っているパートがありますので、それはまた別の記事で取り上げたいと思います。
最後まで見て頂きありがとうございました!
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