いきいき音楽科

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パンチ☆マインド☆ハピネスはリハモのお手本のような曲です

お疲れ様です! いきくんです。

昨晩のニコ生で「リハモ」について良い質問を頂いたので、それにお答えする形で新しい記事を書きました。

 

そもそもリハモとは

リハーモナイゼーション」(名詞系)あるいは「リハーモナイズ」(動詞形)の略です。

 

以前の記事「PUNCH☆MIND☆HAPPINESSは意外と理に適っています」では、

「リハモとは何か」についての説明を省いて「これはこういうリハモですね」という解説をしていたので、伝わりづらかった部分があるかも知れません。

 

【前編】

www.iki2music.work

 

【後編】

www.iki2music.work

 

今回はこの曲に少し触れつつ、「リハモ」について深堀りしていきましょう。

 

2通りのリハモ

1、メロディに対応させてコードをつけかえる

たとえば、はじめから以下のようなメロディとコードがオリジナルとして与えられていたとします。

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ここから、メロディに対応し得る別のコードに付け替えてやるというのがひとつ。

簡単に言うと、「編曲」としてのリハーモナイズですね。

 

付け替え後のコード進行は、以下のように一般的なコード進行のセオリーに当てはまるものもあれば、

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以下のようにそこから逸脱した(ように思える)ものに変えることも可能です。

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(前半は「コンスタントストラクチャー」という手法を使っています。)

 

2、骨組みとなるコード進行をもとに改造する

こちらは、骨組みとなるコード進行を決めてから、それをリハモして新たなコード進行に変えていくというやり方です。

「編曲」としてこれをやることもあるし、「作曲」の段階からこの思考回路でコード進行を決めることもあります。

 

「作曲」の段階でリハモのテクニックを使った場合、面白いコード進行を構築してからそこに合ったメロディを後付けすることで、刺激的な曲を作ることが出来るというメリットがあります。

 

簡単に例を挙げると、

 

★Gm7→C7→Fmaj7

という骨組みを、

 

★A♭m7→D♭7→Gm7→C7→Fmaj7

に変えるのは定番です。

 

ここでひとつ補足

上記のようなコード進行は今ではもう定番となっているので、わざわざリハモという考え方はせず、初めからこのコード進行で曲を作る場合もあります。

 

その場合、「行為としてのリハモ」はしていませんが、このコード進行自体が「Gm7→C7→Fmaj7」という骨組みに基づいているものだ、という構造上の事実は変わりません

 

このことを理解しておくと、考えやすいと思います。

 

代表的なリハモのテクニック

Fメジャーキーを例に、いろいろと見ていきましょう。

なお、この分類は便宜上のもので、実際は複数の分類に該当するテクニックの方が多いです。

 

代理コードで置き換える

【原型】Gm7→C7→Fmaj7

 

①一番よくあるのは、ダイアトニックコードの同じ機能による置き換えです。

【リハモ後】Gm7→C7→Am7

 

(D7に行きたい!(笑))

 

「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」のサビのはじめもこのパターンですね。

 

ただし、これはれっきとしたリハモのテクニックですが、これこそさっきの補足につながります。

流石に今の時代にダイアトニックコードの「I」を「IIIm」に置き換えることを、わざわざ「リハモするつもり」でやっている人は少ないでしょう。

 

②もちろん、ダイアトニックコードでなくても可能です。

【リハモ後2】Gm7→C7→Bm7♭5

#IVm7♭5はトニックの代理コードとしての機能を持ったモーダルインターチェンジコードです。

(用語が分からない方は、今回はスルーして頂いて大丈夫です!)

 

③いわゆる「裏コード」もこのパターンです。

【リハモ後3】 Gm7→G♭7→Fmaj7

 

④コードトーンのほとんどを共有している「変位和音」で置き換えることもよくあります。

【原型】B♭maj7→B♭m7→Am7

よくあるサブドミナント→サブドミナントマイナー→トニックの進行です。

 

【リハモ後】Bm7♭5→B♭mMaj7→Am7

サブドミナントのルート半音上げ、サブドミナントマイナーのセブンス半音上げでリハモしています。

 

コードの細分化

①一番簡単なのは、ドミナントのツーファイブ分割ですね。

【原型】F→C7→F

【リハモ後】F→Gm7→C7→F

 

トニックの「F」を代理コード「Am7」にかえて、さらにツーファイブ分割してみましょう(ついでにオルタードテンションとかつけちゃったり)。

【リハモ後2】Am7→D7♭9→Gm7→C7♭9→Fmaj7

 

②極端な話、もっと細かく分割することも可能です。

【リハモ後3】B♭m7→E♭7→Am7→D7→A♭m7→D♭7→Gm7→C7→F

 

③いわゆる「クリシェ」もこのパターンです。

【原型】F

 

【リハモ後】F→F+→F6→F+→F

同じコードが続く際に、コードトーンのうちの一つを半音変位させるのがクリシェの基本的な定義です。

 

パッシングコードやアプローチコードの挿入

【原型】Fmaj7→Gm7→C7→Fmaj7

変化がわかりやすいように、メロディをつけてみました。

 

【リハモ後1】Fmaj7→F#dim7→Gm7→C7→Fmaj7

 1小節目の3、4拍目にアセンディングディミニッシュを挿入。

(この「F#dim7」はセカンダリードミナントの「D7♭9」と同じ役割のコードです。)

 

【リハモ後2】Fmaj7→A♭dim7→Gm7→C7→Fmaj7

1小節目の3、4拍目にディセンディングディミニッシュを挿入。

 

【リハモ後3】Am7→A♭dim7→Gm7→C7→Fdim7→Fmaj7

・「F」を「Am7」にして半音が続くベースラインを構築。

・解決ポイントにトニックディミニッシュを挿入。

 

【リハモ後4】Am7→A♭dim7→Gm7→C7→E7→Fmaj7

トニックディミニッシュを関連するドミナントセブンスで代理。

 

「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」にも以下のような場面がありますね。

★G/B→B♭maj7→Am7→A♭dim7→Gm7

 

 

あるいは、ツーファイブを以下のようにリハモすることもポップスではよくあります。

【原型】Gm7→C7→Fmaj7

 

【リハモ後】Gm7→G7→C7→Fmaj7

セカンダリードミナントを挿入。(フルートはなんか気分で入れた。)

 

 

パッシングコードやアプローチコードの本質

パッシングコードやアプローチコードは、ディセンディングディミニッシュなどを見てもわかるように、決して「ドミナントファンクション」のみに頼っている訳ではありません

 

ここで、Gm7→G7→C7に注目してみましょう。

 

「ソシ♭レファ」→「ソレファ」→「ミソシ♭」

 

ウィークポイント(3、4拍目)で「Gm7」のコードトーンの1音が半音上がり、それが次のストロングポイントに向けた半音のボイスリードを可能にしています。

 

PUNCH☆MIND☆HAPPINESSの実例

「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」は、実はシンプルな「II-V-I-VI」のリハモでほぼ成り立っています

 

具体的には、今回挙げた例の中から、「パッシング/アプローチコード」「変位和音」「クリシェ」が主に(複合的に)使われています。

 

【原型】Gm7→C7→F

【実際】Gm7→GmMaj7→C→Caug→F

(メロディは大人の事情)

 

もちろん、これはツーファイブだけでなく、順次進行のときにもワークします。

 

【原型】Gm7→Am7

【実際】Gm7→GmMaj7→Am7

この接続は慣れてくると非常にスムーズに聞こえますね。

同じことを、順次進行で続けてやると、

 

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となります。

 

この曲は「リハモと考えればなんとか処理できる曲」ではなく、「まさしく刺激的なリハモのお手本のような曲」です。

 

何より、この曲は「骨組み」がはっきり聞こえてくる造りになっているので、そこに注目して聴いてみると、分かりやすいと思います。

 

おまけ

アプローチノートのハーモナイズ

たとえば、「Gm7」というコードに、次のようなメロディが与えられていたとします。

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このメロディは1小節の「Gm7」というコードでももちろんワークしますが、

以下のようにハーモナイズしてやることもできますね。

 

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「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」のサビの終わりで、ツーファイブのベースラインを1音ずつハーモナイズしていくアイデアも、この考え方の一種です。

 

ハイブリッドコードに変える

【原型】Gm7→C7→F

【リハモ後】F/G→C+/G♭→G/F

 

がっつり分数コードにしてみました。

(一発目はただのsus4ですが) 

 

おわりに

今回紹介したテクニックは、ほんの一例です。

 

リハーモナイゼーションの可能性はアイデア次第で「あれもOK、これもOK」、よくわからないと思ってしまうかも知れませんが、そんな時はまずリハモの種類を知って全体像を見通すことから始めてみましょう。

 

自分で「よくあるコード進行」を、「持ち合わせの知識でどれくらいリハモできるか」実践してみると理解が早いのではないかと思います。

 

「これはOKなのかな……?」と思ったとき、ほとんどの場合理屈上はOKです(笑)

 

ただ、実際の作曲において刺激的なリハモを効果的に使い、そこに説得力のあるメロディを乗せて一曲に仕上げるというのが難しいんですよね。

 

繰り返しになりますが、田中秀和さんの天才的なところはやっぱりそういう部分にあると僕は思います。

 

是非試してみて下さいね!