いきいき音楽科

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【初心者のための音楽理論講座】3-12「モード概略」

お疲れ様です! いきくんです。

今回の記事は「初心者のための音楽理論講座」3-12「キーとスケール12」です。

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前回の記事をまだ読んでいない方はこちら「キーとスケール11 

 

 

はじめに

このシリーズ第三章は、「キーとスケール」と題してメジャースケールマイナースケール

そしてそれぞれが裏付ける調性(トーナリティ)について学んできました。

 

調性(トーナリティ)と異なる概念として、モーダリティがあります。

 

本題に入る前に。

今回の内容は少し難しくなっています。

 

今後、第4章「ダイアトニックコード」、第6章「モーダルインターチェンジ」で必要となる前提情報が含まれているのでこのタイミングで記事にしましたが、

 

理解できなくてもあまり気にせず、第6章の後に改めて戻ってくる、という読み方をオススメします。

 

一周目は「7つの教会旋法」の存在だけ覚えて頂ければOKです。

 

現代のモード 

Cメジャースケールの出発点を変えると、

 

①CDEFGABC=Cアイオニアン 

②DEFGABCD=Dドリアン

③EFGABCDE=Eフリジアン

④FGABCDEF=Fリディアン

⑤GABCDEFG=Gミクソリディアン

⑥ABCDEFGA=Aエオリアン(ナチュラルマイナーと同じ音)

⑦BCDEFGAB=Bロクリアン

 

という7つのモードスケールが現れます。

 

今、初学の読者さんを想定したうえで、敢えて定義の曖昧な「モードスケール」という言葉を使いました。

 

世間ではモードという言葉が非常に広い意味で使われており、

出来る限り混乱なく理解するための選択肢として、

 

①「モード」の音楽史上の流れを1から正確に追う

②現代の目線から、「モード」の全体像をよく知っている「スケール」の形で見通してから、細かい意味の腑分けをしていく

 

を考えた結果、この記事は②のスタンスで書かれているからです。

 

まずはこの7つのスケール群が、メジャースケールの「モード」と位置付けられている、という事実を押さえて下さい。

 

現代のモード(拡張)

先ほどの7つのモードスケールは、

7つの「教会旋法(チャーチモード/グレゴリアンモード)」とも呼ばれます。

 

一般的な書籍やブログで「モード」という言葉が出てきたら、この教会旋法のことを指していることが多いでしょう。

 

ただし、歴史上の教会旋法と、現代における教会旋法は、スケールとして見れば同じでも、その意味合いや用法は異なるので注意が必要です。

 

細かいことは後述しますので、今は「教会旋法」という言葉を、先ほどの7つのモードスケールに対するラベル程度に捉えておいてください。

 

さて、現代においてはメジャースケールを基準とするモードである「教会旋法」以外でも、

あるスケールを基準にして出発点を変えることで得られるスケール群を指して、基準となるスケールの「モード」と呼びます。

 

例えば、Cハーモニックマイナーのモードは、

①CDE♭FGA♭BC=Cハーモニックマイナー

②DE♭FGA♭BCD=Dロクリアン♮6

③E♭FGA♭BCDE♭=E♭オーギュメンティッドメジャー

④FGA♭BCDE♭F=Fドリアン♯4

⑤GA♭BCDE♭FG=Gフリジアンドミナント

⑥A♭BCDE♭FGA♭=A♭リディアン♯2

⑦BCDE♭FGA♭B=Bスーパーロクリアン♭♭7

※今は覚えなくていいよ!

 

この他にも、メロディックマイナー、ペンタトニックスケール、人工的なスケールなど、あらゆるスケールを基準にしたモードが想定できます。

 

ここまでが、現代におけるモードの持つ意味の1つです。

 

レラティブモード

CDEFGABC=Cアイオニアン

DEFGABCD=Dドリアン

EFGABCDE=Eフリジアン

FGABCDEF=Fリディアン

GABCDEFG=Gミクソリディアン

ABCDEFGA=Aエオリアン

BCDEFGAB=Bロクリアン

これらの7つはCメジャースケールを基準とした「レラティブモード」です。

以前勉強した、レラティブキーと同じ考え方ですね。

www.iki2music.work

 

パラレルモード

次の7つは「C」を主音あるいは中心音とする「パラレルモード」です。

(パラレルキーについても上記の記事参照。)

 

※ものさし

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CDEFGABC=Cアイオニアン

CDE♭FGAB♭C(♭3、♭7)=Cドリアン

CD♭E♭FGA♭B♭C(♭2、♭3、♭6、♭7)=Cフリジアン

CDEF♯GABC(♯4)=Cリディアン

CDEFGAB♭C(♭7)=Cミクソリディアン

CDE♭FGA♭B♭C(♭3、♭6、♭7)=Cエオリアン

CD♭E♭FG♭A♭B♭C(♭2、♭3、♭5、♭6、♭7)=Cロクリアン

()内の数字は、主音あるいは中心音から見て、ものさし上で「♯または♭」している音です。メジャースケールとの差異と言い換えることもできます。

 

上に記したのは教会旋法だけですが、現代においては「Cハーモニックマイナー」でも「Cフリジアンドミナント」でも「Cスーパーロクリアン」でも、パラレルモードと見做して問題ありません。 

 

また、パラレルな関係にある教会旋法は、♯♭の数に基づく明暗順に並べると、以下のようになります。

 

《↑明るい、↓暗い》

メジャー系モード

リディアン(=♯4)

アイオニアン

ミクソリディアン(=♭7)

マイナー系モード

ドリアン(=♭3、♭7)

エオリアン(=♭3、♭6、♭7)

フリジアン(=♭2、♭3、♭6、♭7)

ロクリアン(=♭2、♭3、♭5、♭6、♭7)

 

メジャー系モード、マイナー系モードは、第3音がメジャーかマイナーかで決まります。

 

余談ですが、これを利用した音感トレーニング動画がありますので気になる方は是非。

劇的に耳が良くなるスケール練習教えます - YouTube

 

旋法としてのモード

さて、日本におけるモードの訳語は「旋法」とされているようです。

 

例えば、はじめに紹介した7つの教会旋法の2番目に「DEFGABCD」というDドリアンがありました。

 

この音のグループを使って、現代の感覚で普通に曲を書けば、恐らくそれは「Cメジャーキー」の調性を持った曲になるでしょう。

 

しかし、その調性から脱却して、この7つの音を使い、かつ「D」の音に「終わった感」を持たせて曲(旋律)を書くことも可能です。

 

この時、「D」はその曲(旋律)の中心音(フィナリス/ファイナル)であり、

「DEFGABCD」という音のグループを背景にして、Dドリアンのモーダリティを作り出しているということになります(=Dドリアンモード)。

 

これは、例えば「Cメジャースケール」という音のグループを背景にして、Cメジャーのトーナリティを作り出すこと(=Cメジャーキー)と対になる概念と言えます。

 

これを、本来かつ現代にも適用されるモードの意味の1つと考えて下さい。

 

モードの歴史

モードをシンプルに「旋法」だと捉えれば、その概念自体は音楽のかなり初期の段階から存在しています。

日本、中国、世界中様々な民族が、何かしらの音のグループを背景にした独自の音楽(あるいは旋律)を持っていました。

 

古代ギリシアにも「ドリア、フリュギア、リュディア、ミクソリュディア……」など7つの旋法がありました。

実際の音は後の時代のモードとは異なりますが、いくつかの理論は教会旋法に用いられ、そのネーミングは現代まで受け継がれています。

 

はじめに紹介した7つのモードは、

中世ヨーロッパでグレゴリオ聖歌を分類するために体系化された「教会旋法(チャーチモード/グレゴリアンモード)」が由来になっています。

 

当時は、「旋法としての」「教会旋法」という意味合いですが、

現代では「メジャースケールのモードとしての」「教会旋法」という意味が同時に入ってくるため、学習者はここで混乱することが多いようです。

 

(しかもこれ、国によっても割と解釈が変わります。)

 

中世ヨーロッパのグレゴリオ聖歌は教会旋法に基づいた旋法音楽でしたが(実際には教会旋法の理論体系は後付けであり、すべてが理論通りではありませんが)

 

やがて音楽の主流は「メジャースケール」「マイナースケール」に基づいた調性音楽へとシフトしていきました。

 

現代のモードの用法

スケールとして

冒頭では「モード」が何かを詳しく説明せず、単に「DEFGABCD」のような音の階段をまず紹介しました。

 

それ故に、「モードスケール」と敢えて表現しましたが、

これを「スケール」と捉えた場合、それは単に音の階段であり、音楽の理論的なパーツとしての意味合いが強くなります。

 

この「Dドリアンスケール」のような音並びは、現代ではマイナーセブンスコードの「コードスケール」として理解されているものです。

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これは今後、第4章「ダイアトニックコード」で取り扱います。

 

コードスケールという考え方にも「モードスケール」を利用するため、

これも現代において「モード」という言葉の本来の意味が捉えにくい理由の一つとなっています。

 

※「テンション」や「アボイド」はここで登場する概念です。

 

モーダルインターチェンジ

調性音楽の中に、パラレルモードから音を借りてくる「モーダルインターチェンジ」という方法論も多用されています。

 

現代の音楽を理解するうえで「モード」の知識が必要な第一の理由はここにあるといっても過言ではありません。

 

モードを用いた作曲

調性音楽から離れて、本来の「モーダリティ」を聞かせる作曲方法も、19世紀後半辺りからまた盛んに用いられるようになりました。

 

***

 

【重要】音の力学のうえでは、本来「Dドリアン」のモーダリティは、「Cメジャー」のトーナリティより下位にある概念です。

 

極端な表現ですが、教会旋法のモーダリティは常に、自身が帰属する全音階のトーナリティに抗っている状態と言うこともできます。

(ただし、歴史上はモードによる音楽が先にあり、調性音楽はそれより後の時代に成立したということもまた事実です。)

 

現代においては「トーナリティを敢えてぼかし、モーダリティをもって中心音をたてる行為」がモードを用いた作曲です。

 

***

  

クラシック、ジャズ、映画・ゲーム音楽、ロック、ポップスまで様々なジャンルでモードの手法が用いられていますが、

 

一つの重要なジャンルとして、モードジャズ(即興演奏の束縛のなさが重視された)があります。

 

旋法のみが指定されている、いわゆる「一発モノ」もあれば、

モード内で作ることのできるコードを利用した「モーダルハーモニー」を持つ曲もあります。

 

ロックやポップスでは、曲の一部、あるいは全部がモーダルハーモニー的なコード進行で書かれているものも多く見られます。

 

映画音楽やゲーム音楽には、複数のモードを複雑に組み合わせることによって新鮮なサウンドを生み出しているものも多くあります。

 

モーダルとコーダル

これは余談ですが、メロディづくりにおいて「モーダル」なアプローチと「コーダル」なアプローチという考え方があるようです。

 

前者はコード進行にとらわれ過ぎず旋法(あるいはスケール)に基づいた「水平的」なアプローチ、後者はコード進行上の各コードを意識した「垂直的」なアプローチ。

 

言葉選びに寛容な僕としては、一応「なるほど」とは思ったのですが、

英語圏では全く伝わらないということはないものの、あまり聞き慣れない言葉です。

 

上述したように「モーダル」な音楽と「トーナル」な音楽があり(もちろん混ざっていることもあります)

その上で「水平的」か「垂直的」かを指して、

 

・トーナルな曲のモーダルなメロディ

・トーナルな曲のコーダルなメロディ

・モーダルな曲のモーダルなメロディ

(・モーダルな曲のコーダルなメロディ)

 

って、流石にちょっと混乱する気がします。

そこはそのまま「水平的(ホリゾンタル)」「垂直的(バーチカル)」でいいんじゃないかなあ、というのが個人的な意見です。

※なお、これらはあくまで態度の話であり、基本的に横の流れと縦の響きは常に併存します。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか?

本来ここでは7つの教会旋法さえ知って頂ければよかったのですが、

 

1、「教会旋法」と一口に言っても、歴史上の意味と現代の用法はずいぶん異なる。

 

2、巷の入門本におけるモードに関する記述は、この記事の中のどれか一つについてのみ触れていることが多く、現代の用法なのか、伝統的な用法なのか、複数ある意味の中のどれについて語っているのかという注釈もなく、「モード」が敬遠される理由のひとつはそこにあると判断した。

 

3、タイムリーにYouTubeにモードの概略を解説する動画を投稿したため、つい書き過ぎた。

 

モードってそもそも何?(前編)【音楽の疑問】 - YouTube

モードってそもそも何?(後編)【音楽の疑問】 - YouTube

(チャンネル登録切実にお願いします!!)

 

という理由から、長ったらしい記事を書いてしまいました。

  

ただし、この記事はあくまで概略であり、

 

1、旋法としてのモードや、モーダルハーモニーの具体的な書法、個別の特性音などについては一切触れていません。

 

2、古代ギリシアや中世ヨーロッパにおける旋法の具体的な体系についても一切触れていません。

(よくよく考えたら初心者シリーズなので当たり前なのですが笑)

 

ちょっと寄り道してしまいましたが、これで第三章は幕となります。

次回は「確認テスト」を行いますので、この記事以外の内容を是非しっかり復習しておいてくださいね!笑

 

【次回】

【前回】キーとスケール11

【シリーズ一覧】初心者のための音楽理論講座

 

 

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