いきいき音楽科

アメリカ在住音楽家いきくんの発信基地。ジャズを中心に、音楽理論、作編曲、アニソン、音楽哲学まで幅広く惜しみなく情報をシェアしています。

オルタードスケールの練習方法を徹底的にご説明します

お疲れ様です! いきくんです。

今回は、ジャズのアドリブ演奏を志す人が避けては通れないオルタードスケール関するお話です。

 

はじめに

オルタードスケールとは何か。

その由来や、異名同音の正しい扱いについて言及するとかなり長くなりますので、

近々また別で理論的な側面を解説する記事を書こうと思っています。

 

が、ことジャズのアドリブの実践的な側面においては、

ドミナントセブンスにフィットする「おいしい音」が詰まったスケールだと考えて下さい。

 

なんせ名前が「オルタード」とイカツイので、

初心者のうちは「ジャズにはそういう難しいスケールがあるらしい」と敬遠してしまったり、

 

逆に一度このスケールの存在を知ると、「ドミナントセブンスを見たらオルタードスケールしか演奏できなくなる呪い」にかかってしまったりします(笑)

 

スケールの構成音

Gから始まるオルタードスケールは・・・

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ちょっと理論的な話に寄り道すると、

(よくわからんって人は、今は読み飛ばしてください。)

 

これは実は、

①メロディックマイナーの第7モードと同じだったり・・・

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②通常のロクリアンの第4音を半音さげたものだったり・・・

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ということは言い換えると、

 

③メジャースケールの主音以外を全て半音下げたものだったり・・・

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と、3通りの言い方で何故か「スーパーロクリアン」という謎のスケールをご紹介しましたが、

実はこいつ、オルタードスケールと全く同じ構成音を持っており、

 

スーパーロクリアンを異名同音的に読み替えたものが「オルタードスケール」です。

(詳しくは後日。)

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さて、するとどうでしょう。

ドミナントセブンスというコードにとって重要な音である、コードトーンの「ルート、3rd、7th」を含み(5thは実は重要ではない)、

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それ以外の音は「♭9th、♯9th、♯11th(あるいは♭5th)、♭13th」という「オルタードテンション」になっているではないか!

 

という話なのです。

 

オルタードテンションとは

例えば「G7」と一緒に通常の「テンション9th(=ルートの全音上と同じ音)」を演奏すると・・・

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この9thを半音変化(オルタレーション)させた「テンション♯9th」や、通常の13thを半音変化させた「テンション♭13th」を入れて演奏すると・・・

 

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なんともスパイシーな響きですよね。

 

ここで最初に言ったことをもう一度。オルタードスケールは、

 

ことジャズのアドリブの実践的な側面においては、

ドミナントセブンスにフィットする「おいしい音」が詰まったスケール

 

要するに「便利だね」ってことです。

 

オルタードを使う心構え

さて、オルタードスケールの構成音が分かったとて、それを実際にどう使ったらよいのでしょうか。

 

Gオルタードスケール

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を、「G7」というコードで使うことを考えてみましょう。

(コードスケールとコードシンボルは表裏一体です。)

 

オルタードスケール自体は、スケール内に通常の5thを含んでおらず

それと半音の関係にある「♯11(♭5)」「♭13(♯5)」を含んでいます。

 

――これってコードとぶつかるのでは?

 

実際には、そのドミナントセブンスが通常の「V7」あるいは通常の「セカンダリードミナント」であれば、5th問題は無視して、オルタードスケールを選択してしまって構いません(※語弊はあります)。

 

ちょっと乱暴な言い方になりますが、

 

第一に、実はピアニストは大抵の場合、ドミナントセブンスのバッキングで「5th」を弾いていません。

第二に、仮に弾いていたとしても単音のアドリブであれば、♯11thや♭13thを使うことにそこまで躊躇する必要はありません。

 

また、それなりに慣れたピアニストであれば、ソリストの音づかいや息づかいから察知して、

(あ、こいつオルタード的なノリで演奏したいんだな)

と判断してくれます。

 

一方、次のような場合は、オルタードスケールはあまり適切な選択とは言えなくなります。

・♭VII7、♭VI7(サブドミナントマイナー)

・ブルース系のトニックとしてのI7、ブルース系のサブドミナントとしてのIV7

・メジャーキーのダブルドミナント(度数で言うとII7)

・裏コード(裏をオルタードにしたらほとんど表)

 

一応列挙してみましたが、この他にも「この場合は……」と細かいことを言い始めたら色々あるし、

 

正直あとは耳で分かると思います。

 

「頭でパターン分けしないと分からないんだ!」というタイプの人を切り捨てているわけではありません。

実際には、「普通はオルタードしない」ところで「あえてオルタードする」こともあり得るわけで、これ以上はその場の雰囲気なんです。

 

(とはいえもっと細かい話や、根拠について別記事で説明しようとは思っています。)

 

飲み会が「カジュアル」なのか「フォーマル」なのかは指定できるけど、「ネクタイの太さ」は勝手にしてって感じです。

「カジュアル」な飲み会に敢えてタキシードで行くギャグがやりたい(それが受け入れられる関係性)ならそれも勝手にしてって感じです。

 

……さあ、準備は整いました。

後は実際にオルタードスケールを演奏するだけです。

次は効率よくオルタードのノリに慣れるための具体的な練習方法をご紹介します。

(やっと本題です。)

 

マイナーストラクチャー

長々と講釈を垂れてしまったので、ここではまず結論から。

マイナースケールの「12♭345」を練習してください。

 

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これを「マイナーストラクチャー」と勝手に呼びます。

(僕が勝手に呼んでいるだけです。念のため。)

 

Dマイナーであれば、

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Gマイナーであれば、

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ようは、一般的なマイナースケールの断片ってことですね。

(マイナートライアドに、ルートから見て長2度と完全4度の経過音を入れたと思っても良いです。考えやすい方で。)

 

このマイナーストラクチャーを、次のようなパターンで演奏してみましょう。

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ここまでOKですか?

さて、例えば、以下のようなツーファイブの進行があったとしましょう。

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Cメジャーに対するツーファイブワンですね。

この時、マイナー系のコードは「Dm7」です。

当然ここで「Dマイナー」のマイナーストラクチャーを演奏すると、ピッタリ合いますよね。

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では次に、この「Dm7」というコード上で「Aマイナー」のマイナーストラクチャーを演奏してみましょう。

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Aマイナーの「1、2、♭3、4、5」は、Dドリアンの「5、6、♭7、1、2」と一致しますから、これも「Dm7」上でばっちりフィットするわけです。

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さて、それではこの「Aマイナーストラクチャー(略した)」をそっくりそのまま半音下げて、「A♭マイナーストラクチャー」を演奏してみましょう。

 

実はこれ、Gオルタードの「♭9、♯9、3、♯11(♭5)、♭13」と一致します。

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ということは、「G7」というコード上で「Gオルタード」を演奏する場合、

この「A♭マイナーストラクチャー」を使うとおいしい音を効率よく使えるということです。

 

これを先ほどの「Dm7」と合わせてツーファイブに当てはめてみると、

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・IIm7→完全5度上のマイナーストラクチャー=ドリアンの香り

・V7→半音上のマイナーストラクチャー=オルタードの香り

 

ということです!

 

「マイナーストラクチャー」ってかっこいいから言ってるけど、よく考えたら意味わかんないしちょっと恥ずかしくなってきました()

 

おすすめの基礎練習

コンセプトは伝わったでしょうか?

え、文字と譜例だけじゃよく分からない?

 

そんなあなたにこちらの動画!

今説明したことを、実際に音を鳴らしながら順を追ってわかりやすく軽快なトークで解説しています!(読者が遠のくタイプの煽り)

 

冗談はさておいて、この動画の後半で、先ほどの内容をさらに効率よく「基礎練習」に組み込むためのオススメの方法も紹介していますので、

ここまで読んで、今回ご紹介した内容を実践してみたいと思って下さった方は是非とも合わせてご視聴ください。

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(ついでにチャンネル登録をポチッとお願いします。何卒。)

 

この練習のポイント

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もちろん、このフレーズはそのまま「リック」「持ちネタ」として、

実際の曲の中でツーファイブのコード進行にあてはめて演奏できます。

 

ぶっちゃけ「定番フレーズ」のひとつとして、プロの演奏家もたびたび使っています。

 

ここで「むむむ?」という反応を示したリック否定派の方に向けて、リックに関する誤解を解いておきます。

 

アドリブ演奏というジャズ語を用いた会話の中で、リックを使うことはパズルでもなんでもありません。

(リックがパズルに聞こえるとしたら、それを使った人がまだその段階(=カタコト)だからです。)

 

僕たちは普段、日本語や英語を使って会話をしていますが、そもそも「日本語」だってもともと存在している言語で、

その中で四字熟語や故事成語や慣用句なんかを当たり前のように引用していますよね。

 

それでも、それは「自分の言葉」ですよね。それと同じです。

 

 

ただし、この練習は「これを覚えれば簡単にオルタードが使えるようになるねー」というタイプのものではありません。

 

そもそも、「カタコト」じゃない状態にどうやったらなれるのか。

オルタードスケール、あるいはオルタードテンションの音づかいと、その響きを体得していくしかありません。

 

スケールの構成音を知りさえすれば、そのスケールをネイティブに喋れるようになる、というわけではないのです。

 

マイナーストラクチャーを使った演奏は、オルタードスケールにおける「おいしい音」の響きを感覚レベルで身に着けていくのに効率が良い、ということなのです。

 

 

この話をすると、たまに「結局のところ、Gオルタードと考えるべきなのか、A♭マイナーと考えるべきなのか」と悩む方がいらっしゃいます。

 

そうです、昔の僕です。

 

結論から言うと、「その悩みが出てくるレベルで悩んでんじゃねえ」です。

目的は音そのものを体得することですから、それ以前の段階で「頭をどう使っているか」はどっちでもいいです。

 

「オルタードがすらすら演奏できるようになったな」と思った段階で、「ちょっと指クセに頼り過ぎてるかな」と思ったらその時に改めて修正すればいいことです。

 

こと言語の習得においては、ある程度頭を使うことは大切ですが、はじめから最短距離はこれだ、と決め打ちすることは結果的には遠回りになることがほとんどです。

(全員がそうだとは言いませんが。)

 

ともかく、マイナーストラクチャーを使った練習は、ハーモニー感覚を養うトレーニングとしての意味合いも強いということですね。

 

そしてそのためにこそ、はじめのうちはパズルでも良いので、ガンガン実践で引用していくことをオススメします。

 

PDFダウンロード

思いのほか、長い記事になってしまいました。

今回の動画の内容の練習用譜面(PDF、各移調楽器対応)+iRealによる簡易バッキングトラック(6キーずつ、2パターン)用意しました。

 

譜面 in C

譜面 in B♭

譜面 in E♭

★バッキング(パターン①用)

★バッキング(パターン②用)

※今回、異名同音表記はかなりテキトーです。あらかじめご承知おきください。

※データに関するいかなるトラブル、ご要望にも対応致しかねます。

 

 

――いかがでしたでしょうか?

 

最近はYouTubeに力を入れていますが、動画とブログの両立をさせたくて、

 動画で言い足りなかった部分をブログで細かく書いたり、ファイルの共有をしたりしつつ、

音を出す説明は動画に頼るというスタイルはアリかなと思いました。

 

ジャズのアドリブ系の内容は連動させてやっていきやすいな、なんて考えております。

これからも出し惜しみなく情報をシェアしていきます。

 

今回の内容が少しでもタメになったと思って頂けましたら、YouTubeのチャンネル登録、ブログの読者登録ともども、よろしくお願い致します!

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★ジャズのアドリブ練習方法はこちらの記事も是非↓

www.iki2music.work

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