お疲れ様です! いきくんです。
今日は、メロディとコード進行はお互いに独立していることがあるよ、というお話です。
コードは置き換えられる
先日某地方アイドルグループの楽曲の編曲に携わっておりました(詳しくは書けませんが)。
その曲のサビの冒頭はトニックで、メロディは「5→1」。
つまり、キーがCならコードは「C」でメロディは「ソ、ド」です。
そして、オリジナルのサビは、このトニックから始まる8小節のメロディが4回繰り返されています。
さて、コードとしては、もともとは普通に「I(C)」を想定しているわけですが、
4回も繰り返すので、毎回同じでは童謡のような雰囲気になってしまいます。
というわけで、同じメロディですが、
・「I/3(C/E)」転回形にして雰囲気を変えます。
・「VIm7(Am7)」トニックの代理コードで平行調の雰囲気を借ります。
・「IV(F)」add9的な響きになりますが、全然アリです。
という感じで、毎回コードを変えてしまいました。
このように、もともとは同じ響きを想定していた同じメロディでも、編曲の段階で別のコードに付けなおし、雰囲気を変えてしまうことが可能です。
メロディと合わないコード
さて、それだけではありません。
先ほど示した例は、コードを付けなおした後も、メロディがコードトーンかテンションに該当するので、縦の響きとしてクラッシュしていません。
ある意味、付け替えられて当然ですね。
ですが、
・メロディが全体としてはっきりとひとつの調性の中にとどまっている
・メロディの横の流れが強力な推進力を持っている
・同じメロディを何度も繰り返して聞き手に印象づけている
ような場合、メロディと関係なく、コード進行側の文法のみに基づいて違うコードに変えてしまうこともあります。
例えば、トニックの代理コード「#IVm7♭5」なんかはよく使われます。
今回も、2回目のサビで使用しました。
メロディ「ソ→ド」の「ソ」という音は、「#IVm7♭5=F#m7♭5」とは必ずしも合致していません。
が、メロディとしては「ソ」が「ド」にたどり着くという文法上の意味を持っています。
(たどり着いた「ド」であれば「F#m7♭5」でもクラッシュしませんね。)
また、もともとIが来る場所ですから、コード進行の文法上では「#IVm7♭5」で代理可能です。
このように、メロディとコードは必ずしも常に二人三脚で歩んでいるとは限りません。
極端にクラッシュしていなければ、ポップスではよく使われる手法です。
注意点と実例
じゃあ何をやっても良いのか、というとそういうわけではありません。
あくまで、もともと「トニック」で「ソ→ド」というメロディだった、という裏付け(骨格・原型)があって、
その上で、実際に鳴らすコードをメロディと関係なく独立して変えてしまうということです。
有名な曲で実際にコードだけが独立して付け替えられている例としては、
「ようこそジャパリパークへ」のCメロ(ララララ~)で、
王道進行「IVmaj7→V7→IIIm7→VIm7→IIm7→V7→I→(I7)」で、完全にひとつの調性の中に収まっているメロディが演奏されているなか、
実際には「VIm7」を、次のコードに対するセカンダリードミナントの裏コードである「subV7/II(度数で言うと♭III7)」に変えています。
これは、メロディとは必ずしも合致しないコードですが、コード進行上の文法に基づいて、この一瞬だけコードが独立して動いている分かりやすい例です。
というわけで、曲の中では、メロディ、コードともにお互いの横の流れのみに基づいて独立している瞬間もあるのです。
「なんでこのメロディでこのコードなんだ!?」
と思ったときは、そういう視点を持ってみると、分析できるようになるかも知れません。